第126回国会 衆議院文教委員会 3号 平成05年02月24日

○山原委員 最後に、大学予算の問題ですが、学術国際局長おいでになると思いますけれども、高等教育機関の教育研究の条件の抜本的改善の問題ですが、これは最近幾つかの学校で事故が発生をしております。阪大、名古屋、北海道、京都大学などの事故、あるいは実験動物を大量に処分しなければならぬというような事態が起こっています。

 きょう申し上げたいのは、一つは、東京消防庁の査察実施結果によりますと、査察実施対象物四百二十六棟中法令違反件数が八百三十九件、査察を実施した建物の実に八八%が法令違反が認められた。これは大学の事態としては、消防庁からこういう指摘を受けて、そのうち人命危険、火災危険等のある重大違反件数五十五件もあり、東京消防庁は、各種法令違反の是正を促進しているが、従来、法令違反で速やかに是正しないものは警告、命令等の法的措置を含む強い姿勢で臨む、こうしているわけですね。これは全く鋭い指摘がなされておるわけで、その反面、今の大学の教育条件が劣悪であるということの証明であろうと思います。

 これは、この事実は承知しておると思いますが、これに対応できないところに深刻な情勢があると思います。そういう意味で、少なくとも、実験器具・機材が並べられたり危険物が置かれているとかいうさまざまな事態は改善すべきであるという点で抜本的な予算をふやすべきだというのが、これは関係者の世論だと思います。そういう点でどういう見解を持っておられるか。一定の改善がなされたわけですけれども、五年間で一千億円というのでは本当に対象の要改築面積の四%にしかすぎないというわけでございます。しかも、大学の土地を売り払った金で充てようとするもので、これは大変不十分な状態にあるわけです。

 この点について一つ伺いたいということと、最後に、逆に、日本政府はアメリカの要請しているSSC、超大型超電導加速器に二千億円もの金を注ぎ込もうとしているのではないかと思われます。アメリカの学者も、そして諸外国の学者も、基礎研究を圧迫するものとして、何億ドルもの予算をむだにした増殖炉と非常によく似た経過をたどっているというふうに反対をしているわけでございますが、この点について、これはもうやめるべきだと思います。もし日本がこれらの研究に参加するとしましたら、二千億円のほかに新たに粒子検出器を持っていかなければなりません。これに約三百億円がかかると言われていますから、文部省はこうした三百億円と言われる検出器に金を出すつもりなのか、こうした金があるならば、日本の基礎研究に出す必要があるのではないか。その意味におきまして、文部省といたしまして、この我が国の学術の発展にならないSSCに対する予算支出はしないという態度を明確にしていただきたいのでございますが、この点についてのお答えもいただきたいと思います。

○長谷川政府委員 ただいまの前段の方で、先生、研究環境の劣化、施設設備等を含め研究関係で大学の研究環境の劣化があるという御指摘でございました。

 その件につきまして、文部省といたしましては、学術研究、極めて重要な人類、社会の発展の基盤形成となるべきものだというぐあいに認識いたしておりまして、研究環境の劣化について各方面からの指摘を受けている中で、昨年の七月には学術審議会で「二十一世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」という答申を得まして、学術研究基盤を引き上げるということを目標といたしまして整備を進めるという方向にあるわけでございます。平成五年度の予算案におきましても、大学等における学術研究の推進を図るということで、科学研究費の補助金につきましては、対前年度比九十億円増の七百三十六億円を計上いたしておりますし、そのほか特別研究員の大幅な増加あるいは研究基盤の重点的な設備費の投入等々を掲げておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、今後ともこういった研究環境の劣化を食いとめ、いい環境で研究ができる、そういう方向を目指して努力をいたしたいと考えている次第でございます。

 後段の方で御指摘のSSC建設への協力ということでございますけれども、SSCの建設につきましては、我が国がどのように対応するかということにつきましては、昨年の初頭の日米首脳会談におきまして、日米双方で共同作業部会を設けまして、学術的意義あるいは技術的な可能性の問題あるいは本当にいい国際的なプログラムであるのかどうかというような問題について日米双方で協議を重ねるということになったわけでございまして、現在その作業部会あるいはそのもとにおける特別な問題を議論するパネル等々が開催をされておるわけでございますが、今現在といたしましては、クリントン政権が誕生いたしまして、SSCにつきまして明確な意思表示というのを正式な形ではまだ日本政府の方に申し入れておりませんので、しばらく向こうの体制が固まるのを待って再開するという話になっておるわけでございます。

 文部省としてどうかということでございますけれども、SSCに対応するのは、これは政府全体としてどういうぐあいにしていくのかということで、関係各省庁が協議を進めておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、文部省は、国内研究基盤を緊急に整備するということの方がSSCに参加するよりも優先するべきであるという態度を持っておるということをお話ししておきたいと思います。

 以上でございます。

(以下略)

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