1975年の国会会議録より

大出分科員大出俊

第075回国会 衆議院予算委員会第三分科会-3号 昭和50年02月26日

○大出分科員 (中略)
 次に、わずか十分ばかりになりましたが、論点だけ申し上げます。

 まず一つは、大学病院等のお医者さんがいろいろな医療研究のために動物実験をおやりになっていますね。これは一体どこの所管になりますか。

○佐分利政府委員 全般的な問題といたしましては厚生省の医務局でございますが、大学病院ということになりますと、文部省ということになろうと思います。

○大出分科員 これは大学病院に限ったわけじゃないんで、民間の病院もございますし、医者というのは研究費がなければ成り立たぬわけでございます。実は私の兄貴も医者でございまして、滝沢さんと同じ学校でございます。

 そこで、つまり動物実験、これは何か基準がございますか。たとえばこういう動物で実験をしたいという場合に届け出とか許可を求めるとか、あるいは事後報告をするとかございますか。

○佐分利政府委員 特にないと存じております。

○大出分科員 何もしないんですな、実は。だから国際的に大変日本は責められているわけですね。英国なんかの例を見ますと――私は動物の保護及び管理に関する法律の立案者でございますし、せっかくお通しをいただきましたが、だからといって申し上げるのではないのです。ここに英国王立動物愛護協会一九六四年年報がございます。この中などにもございますけれども、この国の動物愛護法というのは百年からになるのですけれども、この英国の動物愛護法の中に、これはドイツもそうでございます。同じ法体系なんでありますけれども、非常に厳しい取り決めがございまして、たとえば実験のために動物を手術をするというような場合に、みだりに手術を認めないのです。一々許可が要る制度になっていますね。牛とか馬だとか犬だとかネコだとかサルだとかいう人間に非常に近い動物を実験動物にすることを原則的に禁止している。代替動物がどうしてもない場合のみ、こうなっているんですね。その場合に、犬なら犬で動物実験をやった場合に、同じ実験である限り、報告が出ているわけですから、あとから許可を求めてくると許可しない。このときのデータで使えるはずだ、こうなるわけですね。つまり大変厳しいわけです。それでもなおかつその許可制度、報告制度というものが果たして有名無実になるのかならぬのかということで、英国内務省に実験動物委員会という委員会を設けておりまして、これはプロフェッサーが委員長で具体的に調べて四六時中監視をしている。そしてここが有名無実になっている、ここが違法であると言う。英国という国は動物に対する法律違反を犯しますと、びしびし罰金を取って禁錮。十五歳の少年だって、頭に来て犬を井戸にほうり込んで殺したら二年間の禁錮、途端に罰金、こういう国ですからね。ですから、やはりこれはそこまで考えなければならぬ時期に来ているという気がする。

 ドイツなんかの場合もそうでございます。ドイツなんかでも、やはり、非常に詳しい取り決めがございます。ここにございますけれども、不必要な実験を避けるために、「動物の実験の結果は最高州官庁の規定する報告をしなければならない。企図された動物の実験は、その目的の申告が規定の官庁に時宜を得て報告されなければならない。その官庁は、同種の実験がすでに終了している場合には、次に許可を求めてきたその実験を禁止しなければならない。」ぴしっとしたこれは法律ですね。したがいまして、「高等動物あるいは人類に特別に関係のある動物、たとえば馬、犬、ネコ、サルのような動物についての実験は、他の諸動物についての実験によって企画した目的を達成できない場合にのみこれを遂行することを得る」と、許可制です。

 ところが日本の場合には何にもないから、再起不能な動物をぶん投げ放しであっても――これは外国から来て調べた人もいて、英国なんかで大きな騒ぎになっておりますね。そこらのところを全く何にもなくていいのかどうかということです、これを承っておきたいですが、いかがでございますか。

○佐分利政府委員 確かにイギリスとか西ドイツの制度は参考にしなければなりませんけれども、またわが国としてはわが国のいろいろな伝統や実情もございましょうから、その点は、その他の先進国の制度も勘案しながら検討すべきことではなかろうかと考えております。

○大出分科員 いまの動物の保護及び管理に関する法律というのは、実験動物の問題に触れた法律なんですよ。いまの御答弁だと法律違反になりますよ。もう一ぺん答えてください。この国の実情ということは、ほうっておいていいという話ですかな。

○佐分利政府委員 そのような方向で努力すべきではないかと思うのでございますが、イギリス等のように非常に厳しい法律をつくることが果たしてどうであろうかということは、慎重に検討しなければならないのではないかと思います。

○大出分科員 私は実はさっきまで、日本獣医師会の方々に講演を頼まれて、動物の保護及び管理に関する法律の説明をしてきたのですけれども、いまの答弁が出てくると、これは法律が現在存在するのですから――どうも私が立案して御協力いただいて通した法律ですから、私からは言いにくいのですけれども、だがそこまで考えてつくってあるわけでございまして、いまこれらの問題は保護審議会でいろいろ議論をしているわけであります。皆さんの側が、なくていい、この国の状況から見てという言い方は、状況が変わったわけですから、そこのところは改めていただかなければ困るので、大臣にこの点は、時間がありませんから大筋しか言っておりませんけれども、この辺のところをひとつ、どちらでも結構でございますが、将来のために、あすは農林大臣に承るつもりでおりますけれども、お答えおきをいただきたい。

○田中国務大臣 どうも率直に申しまして、いまにわかにお尋ねがございまして、私としては責任のある答弁ができませんが、よく勉強いたしたいと思います。

○大出分科員 あと二分ぐらいしかございませんが、羅列的に二、三点申し上げますので、羅列的な御回答をいただけば結構ですが、保健所法施行令というのがございます。この第五条に、「保健所には、地方の実情に応じ、医師、薬剤師、保健婦、助産婦、看護婦、」――保助看婦法のいずれにも該当する三職種でございます――「診療エックス線技師、栄養士、統計技術者その他保健所の業務を行うために必要な職員を置かなければならない。」こうなっているのですが、これ獣医師が入ってないですね。狂犬病予防法は皆さんの所管で、犬、ネコ――ネコも旧来扱っている保健所もございます。八百三十二カ所の保健所ではネコも扱っている。獣医師がここになぜ入っていないのかという、これが一つの問題点。

 次に、第四条、「保健所の所長は、医師であつて、左の各号の一に該当する技術吏員でなければならない。」こうなっていますが、絶対的に医師でなければならぬという理由は一体何かという点。保健所の業務の中から見て絶対的に医師でなければならぬという理屈はどこにあるのかという点。

 それからもう一点、薬事法との関係。獣医師法の十七条というのがございます。獣医師の類似行為というものを禁止しているわけでありますが、これは薬事法四十九条との関係で、たとえばブロイラーを肥育している。ブロイラーというのは皆さん年間一人三羽お食べになっているから三億羽ある。大変なものです。これ、薬剤を投入して、動かさないで育てる、くちばしは切る、こういうようにやっているのですが、この薬事法四十九条との関係で、つまり薬剤を投入する場合の所管は、共管ではございましょうが、一体厚生省なのか、農林省なのか。そして、この法律を改正するとしたらどっちになるのか。三点承っておきたいと思います。
 これで終わります。

○佐分利政府委員 まず、保健所法施行令第五条に獣医師が入っておりませんのは、保健所の補助職員の定数で多いものから八つの職種を具体的に挙げて、そのほかは「その他」でくくっておるわけでございます。しかしながら、獣医師さんは最近各保健所の主任技師だとか衛生課長、その他要職についたりしておりますので、これは将来の問題として検討いたしたいと思っております。

 次に、同施行令第四条が保健所長を医師として定めておりますのは、保健所長は衛生行政の第一線の機関でございます保健所の長として、知事からほぼ大部分の権限を委任されまして、地域の保健衛生に関する全責任を持っております。このような観点から、各国においても保健所長は医師と定めておるものと思います。なお、参考のために申し上げますと、保健所の業務は、健康診断等のサービス業務と、それから食品衛生、環境衛生監視みたいな行政的な事務がございますけれども、そういった意味で保健所は一種の診療所の形になっておりますので、そのようなことになっておるものと考えております。

 最後の薬事法と獣医師法の関係でございますが、これは薬務局長からお答えいたします。

○宮嶋政府委員 動物用の医薬品につきましては、所管は農林省でございます。また、薬事法の関係でございますが、先生もすでに御存じかと思いますけれども、薬事法は、一応は人の医薬品、人間に対する医薬品というものを本体にしまして、厚生大臣のもろもろの権限、規制というものを規定しておりますが、最後の方の条文で、動物に対する医薬品については所管大臣を農林大臣として人間と同じような規制をやる、こういうちょっと変わった規定になっております。そういうことで、薬事法につきましては、人間用の医薬品の規定とそれから動物用の医薬品の規定と、実はそれぞれ二つ全然別々のものが一つの薬事法という器の中に入っておるというかっこうでございます。言いますならば、結果的に農林省とわが方との共管の法律になっております。

 それで、先生のおっしゃりたいことは、恐らく、動物用の医薬品に関する規制を強化したい、そういう法改正をする場合に一体どこが発議をし、どこが作業をするかということだと思いますが、それは農林省だろうと思います。

○三ツ林主査代理 これにて大出俊君の質疑は終了いたしました。

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