1973年の国会会議録より

大出分科員大出俊

※旧「動物の保護及び管理に関する法律」ができた年の国会会議録です。

 

第071回国会  衆議院予算委員会第二分科会 2号 昭和48年03月03日

○大出分科員 (中略)
 二番目の問題でございますが、実は愛知さんが外務大臣をおやりになっていた時代のことで関連して承っておきたいのであります。

 英国においでになった四十四年の四、五月ごろでございましょうか、このときに動物愛護法等の問題とからみまして、日本はどうも犬をたいへんに虐待する国だというので、「ピープル」などという市販の刊行物の中にいろいろ問題を取り上げられていた時代でありました。帰ってこられて、参議院では加藤シヅエさんが質問をされまして、その議事録をここに私、持っておりますが、それに愛知さんがお答えになっておられるわけです。いまお立場をかえて大蔵大臣でございますが、知っておられる大臣でございますから、よけいなことを言いませんが、私は実は三年ばかり前に、長い経過の上に立って、何としても動物保護及び管理法というようなものをつくるべきであろうということで問題提起がございまして、そのときに、法案として不備な点も多々これあり、私のところでひとつ案をつくり直すというようなことになって、理事会の御了承を得て、内閣委員会の関係の方々が努力をしてまいりました。案をつくって、昨年これは参議院の法制局の御協力によってできたものでありますが、各党にお渡しをし、かつ砂田総理府副長官にお手数をわずらわして各省の意見を、これはきわめて気楽に出していただこうということでいただいておりますから、公式云云ということを申しませんが、いただいたわけであります。

 ところがこの中に、大蔵省のお答えがあまり三くだり半的でございまして、いささかどうも私自身としては納得しかねる。大蔵省が法案について、内容全般についていえば、法律事項にするまでもない事項が相当あるという、言うならば法律にしなくてもいいじゃないかという。ここにもう差し上げてございますから詳しく申しませんが、第七条第六項の補助金の規定について、補助金の整理合理化を進めている現在、新たに補助金の規定を設けることには反対だ。さらに予算補助ということにした場合であっても、零細補助金で額が少なくなるから意味がないじゃないか、趣旨に反するじゃないか。法案の中身に動物保護審議会というものをつくるという構想があるのでありますが、審議会の設置も、行政事務の整理合理化の趣旨に反する、こういうことで反対だ。愛知さんもずいぶんたくさん大臣をおやりになっておられますが、私もずいぶん、いつの間にか十年ばかり内閣委員会にごやっかいになっておりますから、たくさんの法案について反対もし、賛成もしてまいりましたが、こういう簡単なことで補助金なり審議会なりというものを片づける性格のものじゃない。ふやすべきものはふやすべきだし、減らすべきものは減らす、是々非々ということにならなければならぬわけでございまして、そういうわけで、これは予算を伴うという点でそういう背景も一つ出てきておりますから、多少の予算を伴ってもこの際つくる必要があるときに来ている、こう私は思います。そういう意味で、この席上で大臣の御見解をいただきたいのです。

 時間がありませんからもう一点つけ加えますが、いま飼い犬条例あるいは狂犬病予防法など、この中に、「犬の引取」がございますが、ここらの問題を中心にして、全国で一年間に捕獲をして収容している犬の数が七十万頭をこえているわけですよ。先ほども厚生大臣齋藤さんに確かめましたが、七十万頭をはるかにこえてしまっている。それも、非常に足りない人数でやっていてそれだけ捕獲をしているわけです。そうすると、その何倍そこに犬がうろうろしているか実はわからぬわけであります。

 そこで、いわゆる犬の害、かみ殺されたりあるいはかまれて大けがをしたという方々の数字、それから結果的にその方々が法的にどういうことになっているか、つまり損害賠償その他を含めまして調べてみまして、いま警察庁が中心になって個々のかまれて死んだケースについてのここ数年の追跡調査を全国的にやっていただいております。やがて手に入ります。ここで簡単に申し上げておきますと、つまりかんだ犬の数、かまれた人の数というものを幾つか申し上げますが、四十三年がここにありますが、四十三年、人間をかんだ犬の数が一万五千八百三十一あります。今度かまれた人たちが一万六千二百六十六、これだけある。それから迷惑だというので苦情が公の機関に参りましたもの、それが泣き声で警察その他に苦情が参りましたものが三千六百六十六件、放し飼いというかっこうで放置されている犬、これについての苦情が二万五千六百七十四件、それから脱ぷんその他で非常に困るということで苦情が出ておりますのが二千百九十一件、田畑を荒らして困るというのが九千九百五十一件、その他が六千六百七十一件、いろんな苦情であります。合計四十三年一年間で五万一千三百四十五件の苦情が出ているのですね。これは都道府県別に全部明らかにされております。これは四十四年、四十五年、四十六年とございますが、減っていない。全部申し上げる時間がありませんからあれでございますが、そういう実は状態でございます。

 そしてつい最近の例をちょっと申し上げておきますが、本年の一月の二十五日に東京都調布市の市立第二小学校の校庭で、休憩中の児童十五人が近所の飼い犬に飛び込まれて手足をかまれて、十五人が病院に収容された。これは全部負傷です。ところが昨年の十一月、福島県で五歳の男の子さんがかまれて死にました。昨年の十月、兵庫県で七歳の女の子さんが死にました。昨年の六月、石川県で一歳十カ月の男の子さんがかまれて死にました。同じ一月に静岡県で一歳の女の子さんがかまれて死んでおります。こういう状態ですね。そこへ持ってまいりまして、先般私のところに、千葉県の石川照夫さんという方が御夫妻で参りまして、御長男武雄さんという十歳になっておられる方が、千葉県夷隅郡岬町和泉二五二六番地いうところですが、これが例の「三時のあなた」に出る山口淑子さんとフジテレビのディレクターの方々とでお見えになりまして、実はこの方をお呼びして、犬の害について番組で取り上げたらたいへん反響が強い。たび重ねて動物愛護協会その他を含めまして国会にいろいろな働きかけをしたのだけれども、さっぱりこの法案もつくってくれないし取り上げてもくれない。狂犬病予防法があったりあるいは飼い犬条例があるからいいではないか、鳥獣保護法あるいは狩猟に関する法律上の分野もあるじゃないか、軽犯罪法で罰則があるじゃないかということを言う。

 ところが、各省所管まちまちで一体どうするかという何ら筋がない。つまりそういうことで放置されている。だからどうしても国会で取り上げてくれないならば、世の中は犬の被害を受けて、これは日常茶飯事で生活の周辺にあるのだから、一大キャンペーンを張りたいのだという。なぜ一体政府はやらぬのか。ずいぶん無責任じゃないか。国際的に見ても、台湾の蒋介石の政府だってりっぱな法律をつくっておられる。ほとんど先進国といわれるところでないところはない。日本の場合には、四十七都道府県の中にまだ飼い犬条例さえできていない県もある。こういうふざけたことでいいのかという実はこわ談判がありまして、私もこのまま進まなければ、やはりそういう世論の力を借りなければならぬという気もするわけであります。

 だから、この点は外務大臣のときに御経験もありまして、いろいろな思惑があった背景も全く私も知らぬわけではありませんが、ここまでくれば、予算的な措置が必要であってもやはりきちっとしたものをつくるべきである。一つは、各国の法律を読んでみますと、飼い主の管理責任というものの体系、もう一つは、動物実験その他を含めましての虐待防止法という法律体系、もう一つは、自然保護という体系、三つございます。その中で、日本の今日の国情に合わせてどういうふうにしていくかということを考えて、たたき台をつくって各省に差し上げてある、こういうことであります。その一番根っこである予算的なものが多少かかったにしても、東京都に行って聞いてみますと、犬の引き取り、ネコの引き取りというふうな問題で外国からもたたかれている。犬舎がひどいとか食いものをやらないとかいうことが、やはり国がしてくれないから、ここから先に進みかねるという意見でございます。

 したがって、先ほどのようなお答えでなしに、ここまで来たのですから、もう少し前向きにお考えを願えないのかというのが趣旨でございます。

○愛知国務大臣 これは大出さんよく御承知で、また御記憶いただいてたいへんありがたいのでありますが、私もまことに情けない経験をいたしましたし、それからもう今日となっては動物虐待防止ということだけではなくて、もっと広い範囲で、ことに子供さんたちの被害その他、いまも数字をあげてのお話でまことにごもっともなことでございます。実は私も一人の議員として、加藤さんその他が御中心になられて議員立法を御計画になったときも、私もいろいろ御相談にあずかったりしたわけでありますので、いま言及されましたようにあの当時の法律案については、当時の大蔵省としては補助金の問題とあるいは審議会の問題、それからもう一つは、これは各省を通じてのことですが、所管省がどこであろうかというようなことで、そういうふうにかつぎ込んだというような経緯がございましたが、一つは、きょうあらためて御提示いただきました。これは積極的に私も責任をもってぜひ推進いたしたいと思います。これはぜひ私自身がやらなければならないと考えていることでございます。

○大出分科員 これは私は、途中でおやりになる方がないもんですから、私も忙しい男ですけれども、やむを得ず法案までこしらえる努力をしまして、足りないものを全部資料を集めましてやっているわけでありまして、これはぜひ御協力いただきたいのでありますが、いずれにせよ、御自分ではなくても身近に犬にかまれた方もあろうし、経験もありましょう。子供さんだってそういうことでございますから、そういうふうにして考えていただきたいのでありますが、いまいみじくもお話がありましたように所管の省がはっきりしない。さっき厚生省のところで、環境庁それから総理府に来ていただきまして、政務次官にお見えいただきまして、どこが所管をしていただけるのか、回答はいただいているのだが、いまお話がございましたように、安井謙さんの総務長官のときに、かつて総理府となっておったけれども、ところがこの回答の中では、総理府所管としてはなじまないものであるというふうに書いてあって、総理府も逃げておられるのですね。そこらは、なじまぬじゃ困るのじゃないか。厚生省としても、狂犬病予防法というものはあるにしても所管としてはなじまないのだ、こう言う。そうすると自治省としても、自治体相手にややこしくなるものだからなじまぬものだ。片っ端からなじまないわけですよ、これが。もうちょっとこれはなじんでいただきたいのですよ。

 結局私は、環境庁も、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律があるのですから、いまのところ片っ端なじまぬと官庁で言われては困るので、多少おなじみになってもらわないと困る。先ほど総務長官という立場で、代理として小官山政務次官に、齋藤さんのおいでになるところで、そこらが中心になって厚生省として協力する、一生懸命やってみる。だからそこらが中心になって、まず所管の省をきめてもらう。窓口を明らかにしてもらいたい。そしてその上でひとつこの折衝に入って、幸い私の委員会、内閣委員会の理事会では先般、ひとつ超党派でやろうということで話はまとまっておりますので、多少の予算的な措置がございましても、こういうことでありますので、ぜひひとつ御尽力を願いたいと思います。

(以下略)

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