REACHは、2007年に施行されたEUの新しい化学物質規制です。(採択は2006年)

 

◆不必要な動物試験の回避について

REACHでは、不必要な動物実験を回避するため、同じ化学物質を流通させる事業者は、データを共有して合同で登録をすることになっています。(ただし、単独でも可能) 詳細はこちら

REACH所管庁であるECHAで、順次、不必要な動物試験を回避するための情報を募っています。

 
(※注:以下は施行前に掲載した内容です)

REACHは、Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicalsの略で、EUで新たに始まる化学物質規制の名称です。

これは、新たに製造メーカーなどに対して、EU域内で製造・輸入される化学物質に関して登録を求める制度であり、大量の動物実験を必要とするものであったため、ヨーロッパの実験権利団体が反対の意を表明してきましたが、2006年末、最終案が承認されました。

最終案には、動物実験に代わる方法の促進も掲げられており、このREACHの動きの影響を受け、日本でも動物を用いない安全性試験の開発にNEDOが乗り出しています。けれども、日本での開発の意図は、大量の安全性試験をさばくために、安く、早く、短期間に結果の出せる試験方法がほしいからに他ならないと思います。

化学物質に対する予防原則の理念には賛同しますが、それを体現する制度が動物実験を大量に必要とするものであるならば、それは非常に残念なことです。

●欧州議会が化学物質の新規制法案REACHの最終案を承認

NEDO海外レポート992号 2007.1.10(リンク切れ) より
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/992/992-01.pdf?nem(リンク切れ)

2006年12月13日に欧州議会は、製造・輸入する化学物質の登録を事業者に義務付ける新たな化学物質規制REACH(化学品の登録、評価、認可及び制限に関する規則)の最終案(第二次妥協案)を可決した。これにより、REACHは2007年6月1日に発効することとなった。

REACH は、欧州連合(EU)域内で年間1 トン以上製造・輸入されるすべての化学物質の登録を義務付けるもので、3 万物質が対象となる。登録時期は製造・輸入量や物質の有害性により異なるが、段階的に2018年までにすべての物質の登録が必要となる。

有害性があると判断される物質については、製造事業者(企業)に安全な物質への代替計画の提出が義務付けられる。現状では代替する物質がない場合は、代替物質を開発するための研究開発計画の提出が求められる。

登録・認可手続きは2008年にヘルシンキ(フィンランド)に新設される欧州化学庁が監督する。

REACH は、現在40あるEUの化学物質に関する法律に取って代わり、すべての化学物質を網羅する単一の規則に整理統合したものである。

EU ではこれまで、1981 年以降に発売された「新規化学物質」約3,000 種類と、これ以前に生産された「既存化学物質」約10 万種類を異なる方法で管理していた。

REACH は、この二重システムをひとつに統合するものである。REACH に基づく最初の義務は事前登録であり、これは2008 年6 月から11 月の間に行われる。その後それぞれの化学物質の供給量や危険度に応じて3年半、6年、11年をかけて登録が行われる。

また、産業側の一般注意義務(duty of care)及び製品中の有害物質についての公衆への伝達の義務を含む。また、機密情報の保護及び動物テストの重複を避けるための規定がある。

理事会、欧州委員会、欧州議会の3機関内での検討・調整に加え、経営者団体、市民団体の激しいロビー活動が加わり、3年間わたり内容についての議論が進められていた。

なお、市民運動の成果として、動物愛護の観点から動物実験に代わる方法の促進も規則の目標に掲げられている。

参考資料:
欧州委員会のプレス発表資料
REACH: Commission welcomes European Parliament vote on new EU chemicals legislation

欧州議会のプレス発表:
Parliament adopts REACH – new EU chemicals legislation and new chemicals agency

●化学物質新規制法案REACHを巡る論議の経緯(EU)
http://www.nedo.go.jp/content/100107008.pdf

REACHで11年間は3%動物実験が増加、その後本当に減るのか?

新たな化学物質政策REACH に関するQ&A
環境省仮訳(Ver.1.0)123 より抜粋
http://www.env.go.jp/chemi/reach/reach/qamemo_1.0.pdf

17. REACH は、より多くの動物実験をもたらす結果になりますか?

REACH は、健康と環境(動物を含みます。)を危険な化学物質による有害な影響から守ることを担保することを目的にしています。物質について必要な知識を取得することは、いくつかの動物実験を必要とします。

しかしREACH は、動物実験を絶対的に最小限に削減するよう設計されています。不必要な試験は、脊椎動物の試験から得られる全てのデータを共有することの義務付けや、数量の多い物質の試験計画は、新しい動物試験を実施する前に、化学物質庁によって承認されなければならないとの条項により、回避できます。このことは、エンドポイント(endpoints)の研究が適切で、研究の科学的検証が十分高く、試験計画が他の試験と重複しないことを確実にするでしょう。

第二読会では、ある試験が実施される前に45 日間のパブリックコンサルテーションを行い、データが既に入手可能でありそのために試験が不要かどうかを検証するための制度の導入について合意しており、さらに状況は改善されています。

EU 内での動物実験が現在のレベルに比較して3%増加するのは、REACH が発効した後の最初の11 年間のみと予想されています。11 年後には、現在使用されている約3万物質についての知識の欠如という過去の問題への対処が十分に行われ、その後は年間で僅かの新規物質のみが試験されることから、その数は再び急速に減少するでしょう。

 

REACH:化学物質情報交換フォーラム(SIEF)

REACHでは、原則事業者ごとの化学物質の登録となりますが、同じ物質を複数の事業者が登録するような場合、脊椎動物を使った動物実験の情報を共有しなければならないとされています。

そのために、同じ物質を登録しようとする事業者は、化学物質情報交換フォーラム(SIEF:Substance Information Exchange Forum )への参加が義務付けられていいます。(脊椎動物試験の情報は共有して登録、費用も分担)

これは、動物福祉の観点から重複動物試験を避ける目的でつくられた仕組みですが、企業秘密を守るための正当な理由が立証できれば、この原則からオプトアウトし、データを開示しないで一社登録することもできるとのことで、どの程度重複実験が避けられるのか不安に思います。

「EUの化学物質規制動向調査調査」より
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/h16fy/ 160714-4-2_jetro.html

中央機構は、事前登録された化学物質毎に化学物質情報交換フォーラム(SIEF)を設置し、フォーラム内で化学物質の情報が交換される。ただし、知的財産権が保護されている情報の提示は義務付けられない。ここで、構成物質や使用用途等のカテゴリーが異なれば、当該の製造者ないし輸入者は独自の行動を取ることができる。化学物質の同一性をどう定義するかが問題になるが、構成物質が最低80%同一であれば、同一物質と見なされる。

フォーラム内では、正規登録に向けて事前登録した業者がコンソーシアムを設置することができる。コンソーシアムの設置に前向きでない場合は、メインの登録者を特定して、その他の業者は準パートナーなど独立の第三者として正規登録に参加することもできる。フォーラム加入者は正規登録のために、基礎データパッケージを作成する。ここでは、必要に応じて試験が実施されなければならない可能性も考えられる。なお、登録にかかるコストはフォーラム内で分担される。製造者ないし輸入者個人は独自に直接登録することもできるが、その場合、同等の基礎データパッケージが要求される。

登録後に登録済みの化学物質を製造、輸入したいとする新規業者は、中央機構にその旨を申し出ると、中央機構は新規業者に登録に要したコスト(基礎データパッケージ作成コスト)を伝える。新規業者は登録実施業者とコスト負担に関して合意し、それによって新規業者には当該化学物資の基礎データへのアクセスが認められる。

なお1 化学物質/1 登録のシステムでは、コスト負担の問題を仲裁したり、コンソーシアムへのオープンアクセスについて監視するために、独立のオンブズマンが中央機構ないし外部に設置することが提案されている。

イギリス政府は、1 化学物質/1 登録原則案とした場合のコスト削減効果を調査するスタディを2005 年1 月に公表した。それによると、1 化学物質/1 登録原則案を採用した場合、欧州委員会のREACH インパクト調査結果(4.項参照)に対して最低7700 万ユーロのコスト削減効果があるとしている。


REACH関連リンク:

英語

欧州委員会REACH:
http://ec.europa.eu/enterprise/reach/index_en.htm

日本語

環境省:REACH 関連情報
http://www.env.go.jp/chemi/reach/reach.html

化学物質問題研究会:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/