畜産業をやっていたり、動物実験をやっていたりする人は、「動物福祉」というときの「福祉」の語のニュアンスを、何か「かわいがること」「愛すること」のように勘違いしているのではないかと思うときがあります。

というか今日、畜産技術協会が入札したアニマルウェルフェアの検討会の今年度の第1回をまた傍聴しに行ったのだけど、まさにこの「福祉」という言葉をめぐって、生産者から「私たちは殺す動物を育ててるんだから、殺すことのない愛玩動物と一緒にされたら困る」というような意見が出されていてビックリしました。

動物の「福祉」は、殺して利用する動物たちのためにある言葉だと思うのですが…。(アレぇ?)

いわゆる「動物福祉派」の考え方は、平たく言えば「人間が動物を利用することは是とするけれども、生きている間は最低限動物らしい生を保証しよう、利用するからといって動物を虐待的に扱うのはよくない」という考え方です。だから、利用することは前提になっている思想であるにもかかわらず、そこのところがあまり日本では理解されていないように思います。

人間の社会福祉政策が(実現しているかどうかは別にして)、最低限人間らしい生活に達しない人々になんとかそれを保障しようとするものであるのと同様、動物の福祉も、最低限動物らしい生に達しない動物たちにそれを実現させようとしているに過ぎないと思います。

まぁそう考えてみると、現在普通に行われている工場畜産では、その最低限動物らしい生ですら侵害されているという意味でもあるから、現場の生産者に家畜福祉ですら理解されないのは重々理解するところではあるのですが…。

でも言葉の意味が誤解されているのではますます議論がクロスしないですよねー。なんか聞いてて疲れます(;´д`)

ちなみに、いわゆるコンパニオンアニマルが受けている愛情などは、「福祉」とは言わない気がします。そう言われたら、なんだか飼い主としては「カチン」と来ますよね。私たちが与えているのは、「オプション」であり、最低限の福祉じゃないわよ、みたいな。

例えて言うなら、経済的にも問題なくてごくごく普通くらいには子どもの幸せを願って普通に子育てをしている人が、「あなたの家の児童福祉は…」なんて言われたら、ちょっと「ハァ?あんた何言ってんの? 失礼なヤツ」とか思いますよね。普通の親が子どもに願っているのは、福祉なんてレベルではなくて、もっとオプションな幸せだと思うのです。(行き過ぎて、他人より幸せになることに血道あげすぎで、結果弊害起こしてる親も多いと思うけど~。あ、コンパニオンアニマルでも行き過ぎはあるかもしれないですね…)

もちろん、いわゆるコンパニオンアニマルでも最低限動物らしい生が保証されていない場面は多々あって、「福祉」を言わなければならないことはあるわけで、そこが福祉団体のお仕事の生じる理由だと思うけど、個人的には、普通の飼い主さんが普通に愛情こめて育てているのを指差して「福祉が実現されている」というのは、レベル低すぎで少し抵抗があります。

それこそ、「殺す動物じゃないんだから」って感じでしょうか(苦笑)。

ここってもっとディープに、コンパニオンアニマルの殺処分是か非か論争まで説明したほうがいいのかよくわからないけど、「愛護協会」なら「ああ、きっとコンパニオンアニマルだけだな」と感じ、「福祉協会」と聞くと「ああ、畜産動物や実験動物のこともやってるんだな」と感じる、この微妙なニュアンスはわかってほしい気はします~~。

(ちなみに、動物を利用することを是としないアニマルライツの人が、だれか動物の活動をしている人を指差して「あの人は福祉の人(welfarist)なのよ(-0-)」と言うときは、「あの人は動物を殺して利用してもいいと思っているのよ」という意味で、どちらかというと後ろ指な表現に使われたりしているわけなのですが、ここまで行っちゃうと「過激」で理解されないでしょうか(笑) でも、「アニマルライツ=動物を解放しちゃう人」という理解も間違っているので、ほんとにそういう「過激過激プロパガンタ」みたいなので運動を誤解させようとする喧伝はなんとかしてほしいと思いますワ、ほんとに。日本ではとくに実験動物系からそういう言い方が広まってるように感じますが、やりすぎると反発食らうのは自分たちだと思います。)

おおっと、会全体の報告がおろそかになってますが、また時間がありましたらといたします。

あ、でも一つだけ。ケージ飼いの養鶏を、環境をコントロールできていていい飼育法のように言うのは…絶句。一般の消費者はケージを実際に見ることはないから、こう言っておけば信じてくれる的なものを感じましたよ(–;。ケージ飼いは、身動きがとれなくてかわいそうという同情の問題だけではなく、実際、鳥の状態に違いがあるでしょ…… 学生の頃、偶然ばったり見たときは、まだ動物の活動のこともそれほど知らなかったけど、その様子にギョッとしたわよ…ほんとにもぅ…