兎とかたちの日本文化

兎とかたちの日本文化

  • 作者: 今橋 理子
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2013/09/28
  • メディア: 単行本

封印した過去(笑)を思い出させる本です。実は私も、某動物雑誌出版社でライターのアルバイトをしていた頃、ウサギ雑誌やらムックやらにウサギグッズやウサギスポット、ウサギにまつわる話題などを書いていたことがありました。
本人はネズミグッズコレクターで、ウサギじゃなかったんですけどね(^^;。ウサさんが来た今も、ウサギグッズに手を出したら破産だと思って慎重になっておりますが(^^;、思わずこの本は手に取ってしまいました。
しかし、そういうネタの集大成本かと思いきや、読み進むと結構学術的な考察の深い本でした。
また、ウサギと花の文様モチーフは、日本本来の古典図画にはなく擬古典であろうとか、日本人がストラップをつけたがるのは根付の伝統の影響じゃないかとか、興味深い考察が幾つか載っています。
それで。
生きたウサギの話は、冒頭に「うさんぽ会」の話が紹介されている程度だったのですが、結論に近い部分にも興味深い記述がありました。
実際の動物園内にしばしば設けられている<子どもどうぶつえん>のコーナーでは、小さな子供たちが子ウサギやモルモットなどを抱っこしたりできるが、兎という動物へのそうした親しみ深さや距離の近さが逆に、本来は「かわいい」とは無縁の造形としての「兎のかたち」という歴史や文化を、見え難くしているとも言えるのである。
ほっほ~~ぉ。
興味深い考察です。
歴史的には日本文化におけるウサギの造形は、妙に耳は長いが、リアルな感じのノウサギの形ですから、ここでは、動物園なんかが押し付けている「ウサギかわいいね~」が、実はリアルに近いウサギ像の伝統を見えなくさせていると言っているわけですね。
教育を機能として掲げる動物園が、実は誤った教育をしているということが暗に示唆されているので興味深~~い記述でした。
それにしても、最も興味深かったのは、ウサギのモチーフがこんなに好きな文化は、アジア圏でも日本だけだろうという考察です。
でも実際のウサギへの同情心は、日本はどうなんでしょうか。食べるほうは、それほど食べないと思いますが、毛皮と動物実験。
欧米社会では、ウサギが飛び跳ねる形といえば、もはやこれ↓だろうなと感じるくらいですが、化粧品の動物実験に対する意識調査の結果は、下の世界地図の通り。日本は3割くらいなので、低すぎて載せられません(苦笑)。
leaping bunny
意識調査のデータ: 国レベルの化粧品の動物実験禁止を支持する一般消費者の割合
 
リンク元:
Cruelty-Free な(動物に苦痛を与えない)世界を作り出すために
http://www.hsi.org/issues/becrueltyfree/facts/infographic/ja/
日本人、そんなにウサギ好きなら、もうちょっとこの問題にも関心をもってほしいな。
誓約に、ぜひご署名ください。
http://hsi.org/bcfjapanaction
……と、最後は結局、この話題で結ぶ私でした。