チンパンジーに法的権利を求める裁判の件、もう少し長い記事がありました。
チンパンジーは人間とみなされるべきだろうか?
WIRED NEWS
裁判の仕掛け人であるスティーブン・ワイズさんは、千葉大学のグループが招聘し、日本各地を回られたことがあるのですが、その時講演を聞いたことを、どうも私はブログに書いていないようですね…。
参加しただけで脳みそが疲れて、報告を怠っている件が結構あるので、反省することしきりです。
記憶に頼ってご報告すると、ワイズさんが重視するのは認知機能(特に自己認識)で、理解能力がある分、人間が利用することに対する苦痛度は高くなるので、それに見合った救済が必要だという論理を展開されていたと思います。かなり科学的知見を収集して、それに基づいて判断されているようでした。
ある意味動物に序列をつけていることになるので、「それだとネズミとかがあまり救われないような気がするのですが」という質問をしたのを覚えています。お答えは、「ネズミの認知能力については研究していないのでよく知らないが、チンパンジー・イルカ・ゾウに達しないのは確か」とのことでした。
あくまで認知機能重視ですが、それにはそれなりに論理性・整合性はあると思います。たとえば、痛みを感じる能力がない生物について「痛みを与えるな」と主張するのはナンセンスですが、裏を返せば、認知機能についても、高ければ高いなりの対応をするべきと当然なるかと思います。 
ということで、ネズミを救うには、やはり身体的苦痛も強調しないと厳しそうですが、その割には心理実験に使われているのが謎ですよね~、ネズミ! (いいかげん、使うの止めろ~ッ 笑)
ということで、「チンパンジーの能力について知るため、閉じ込めて実験がされているが、そういった実験結果がなければ権利が主張できないのは矛盾ではないのか」という質問をしたのも覚えています。
(アンチに思われてたらどうしよう(汗) 実は活動家だけの交流会というのもあったのですが、そこで残酷ビデオの法規制の話題が出て、私が「動物保護団体も、畜産、実験等の残酷なビデオを売っており、単純な規制は首を絞める」と言ったら、ちょっと座が凍ったような(汗)。でもアメリカでもそういう議論があったそうです。)
ちなみに、ワイズさんは、犬の認知能力についても案外評価低かったです。
このとき、学生さん(大学院生?)が「植物も命がある」と発言したことに対しては、「植物も連続して考える人がいるのは仏教の影響だろう」とのことでした。欧米ではこの文脈で植物を持ち出す人はいないと言ってました。
私もここで植物を持ち出す人がいたのは、少しびっくりしました…。植物問題については、日本の理科教育は失敗しているのではないかと思うことがあります。
この日本ツアーについては、千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第243集「個体と権利」(嶋津格 編)にまとめられていて、PDFで読むことができるとのことです。
コモン・ローにおける人以外の一部動物の基本権
スティーヴン ワイズ博士「合衆国における動物法とそのグローバルな意義」
権利主体となる根拠をめぐって;ワイズ博士広島講演のまとめにかえて