先日、第2回目の獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議を傍聴してきました。
欧米に大きく立ち遅れる日本の獣医学教育をどう変えていくかという話については、4年次終了時点で全員に共用試験を行い、いわばその仮免許の状態で、5~6年次に「総合参加型臨床実習」を行うという将来図が既に描かれているのですが、それが「絵に描いた餅になるのでは」と、かなりどんよりくる議論がなされていました。
報告をされていた先生も、最後のトドメは、「このままでは確実に、5年以内に日本の獣医学教育はアジアに追い越される」と言っていましたし。
そこまで臨床実習の受け入れ態勢を整えることは難しいのか…という話ばかりで、低調な雰囲気でした。どんより。そんな言葉がぴったりの雰囲気です。
この人たち、お金が出ればそれなりに新しいことにも取り組むのに、何というか……と思ってしまいます。有識者会議というのは、その道で大成された方々の集まりではあるのかもしれませんが、若い力で何かを構築していくような勢いはすでに失われた世代がやっているから、改革には不向きなのかもしれません。
動物実験についての海外のような監視制度を受け入れがたいのも、この体質のせいなんだろうな、と思いながら聞いていました。
そして、目指しているところも実はレベルが低いのではないかと心配になる話も出てきました。自治体が持つ動物愛護センターが獣医学生の臨床実習の場として使えるのではないかというんです。
ちょっと驚きました。そりゃ、「箱」(建物)は、すばらしいです。最近の愛護センターは。
でも、そもそも今の日本の愛護センターで、獣医学生に獣医療を教えられるほどのところが幾つあるのでしょうか。逆にセンターの獣医師が再教育を受けなければならない状況なのは未だ変わらないと思うのですが。
何か「動物愛護」というと聞こえが良くなってしまったのが裏目に出ているというか…心配です、この話。
だって、「獣医学生のための実験動物の扱いなら可能だ」という話もあったらしいのです。
実験動物?
センターに収容された動物を教育に利用するとしたら、治療して、不妊去勢手術して、ワクチン打って、新しい飼い主に渡すのでなければ、市民には理解されないと思うのですが、実験動物という呼び方じゃあ、一体何をするのかと思ってしまいます。
それじゃあ、「払い下げ再来か!?」と愛護団体が聞いたら騒ぎますよ。(ていうか、私か、騒ぐのは(笑))
海外のシェルターで行われているプログラムのように、動物実験の代替として大学が関与するなら歓迎される話だと思いますが、センターに学生が来て自治体獣医師が指導するなんて無理でしょう。職場体験ならともかく、「臨床実習」ですからねえ。
(実験じゃないのよ、症例がいるのよ)
負傷動物が来ても、「とりあえず放置します」とか教えられても困るし。まず動物愛護行政が行う獣医学的処置の底上げに関与してほしいところです。
・・・ということで、とにかく臨床実習の受け入れ先については、そういうことまで考えられているくらい場所がないようです。
日本社会が動物たちを見捨ててきた結果がこれなんだろうなあと思わざるを得ません。