「Animals」の第2号に興味深いペーパーが載ってました。例によってまだちゃんと読んでいないのですが(汗)、ご紹介します。アメリカの主要な研究機関の動物実験委員会の構成について調べたものです。
Analysis of Animal Research Ethics Committee Membership at American Institutions
http://www.mdpi.com/2076-2615/2/1/68/
Lawrence A. Hansen, Justin R. Goodman, and Alka Chandna
名前見ただけで、どういう立場の調査か、わかる人はわかりますけどね、これは^^;^^;。
つまり、動物実験委員会というのは動物実験関係者で占められているものであり、動物福祉や一般市民を代表する人は、声がかき消されてしまう程度にしか入っていおらず、偏っていると言いたいのだと思います。
すごくよくわかります(´・_・`) 
でも… 日本なんて、動物の扱いについて一般社会の関心を代表する人を入れろなんていう規定すらないですからねぇ……。
動物実験計画を国や州が審査して許可する欧州とは違い、機関内の動物実験委員会が審査して承認するアメリカは確かに「自主規制」と言われていますが、動物実験委員会について法的な定めがあるところは、それでもやっぱり日本と全然違うなぁと思わざるを得ません…。特に、今、動物愛護法改正のもろもろが進んでいますし…。
メンバーの構成の規定についても、PHS(公衆衛生局)指針のものと、動物福祉法のものと、両方載せた対比表が載っていて、これを見ると、それでもやはり、少なくとも制度については日本よりマシなのではないかと思ってしまいます。ただ、アメリカのほうが資金潤沢にガンガン動物実験しているだろうから、向こうの団体の人の無力感非常によくわかるのですが…(まあ無力感はどこでもあるのですが)。
保健研究推進法に基づくPHS指針は、PHSが資金を出す研究機関が守るべきものなので、その点では動物福祉法より対象が限定的です。でも、対象となる「動物」については全ての脊椎動物になるので、動物福祉法が対象としないマウス・ラット・鳥類を使う研究も入ってきます。ネズミさんも対象にしてくれるのだから、こちらにも、もうちょっとチュウ意を払うべきだったかもしれません。
日本なんて、動物福祉目的の制度は現在存在しないにもかかわらず、動物愛護法を改正すると「二重規制だ」とか、わけのわからん抵抗を研究者が見せていますが、それでいて「日本はアメリカ型だ」とか言ってる当のアメリカでは、2つの法律が動物実験委員会に関係しているわけで…何が言いたいのかますますワケがわかりません。
PHS指針と動物福祉法の2つが動物実験委員会に関わってくる点について、わかりやすく日本語で読みたい方は、下記の論文などをどうぞ。↓ 
動物実験の倫理と動物法研究 : Ethics on animal experiments and research on animal law
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/meta-bin/mt-pdetail.cgi?cd=00056308
古澤美映
イギリス及びアメリカにおける動物実験規制の比較分析
日本の規制体制への示唆

http://www.jstage.jst.go.jp/article/sociotechnica/5/0/5_132/_article/-char/ja
大上 泰弘, 神里 彩子, 城山 英明
参考
OLAW(実験動物福祉局)のホームページより:
HEALTH RESEARCH EXTENSION ACT OF 1985 より
“ANIMALS IN RESEARCH”

http://grants.nih.gov/grants/olaw/references/hrea1985.htm
Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory Animals
http://grants.nih.gov/grants/olaw/references/phspol.htm