アメリカのNIHは木曜日(12/15)、チンパンジーを使った医学研究や行動研究への新規の研究費交付をいったん停止したそうです。
U.S. Will Not Finance New Research on Chimps

文中に出てくるNIHの声明は、こちらですね↓
Statement by NIH Director Dr. Francis Collins on the Institute of Medicine report addressing the scientific need for the use of chimpanzees in research
http://www.nih.gov/news/health/dec2011/od-15.htm
NIHは、アメリカ医学研究所(IOM)の専門委員会が、「ほとんどのチンパンジーの実験は不必要である」と結論付けた勧告も受け入れるそうです。
IOMのサイトを見ると、トップページの一番上にその勧告について載っていました。クリックすると、ここです↓
Chimpanzees in Biomedical and Behavioral Research: Assessing the Necessity
http://www.iom.edu/Reports/2011/Chimpanzees-in-Biomedical-and-Behavioral-Research-Assessing-the-Necessity.aspx
「チンパンジーの実験の明確な禁止は支持しない」と書いてありますけどね^^; ただ、チンパンジーの実験は、ヒトの健康のために必要でありなおかつ、ほかに方法がないことが条件であり、たとえばモノクローナル抗体研究は新技術で置き換えできるけど、まだ及んでいないところもあるから、今やっているやつはしかたないといった感じでしょうか。C型肝炎研究については、意見の合意に至らなかったそうです。
そしてNIHは、この勧告を遂行するためのワーキンググループを立ち上げ、そこでの審議が終わるまで、新たな実験に研究費を出すことはしないことにしたのだそうです。
ということで、完全に新規実験停止ということではないみたいですが、アメリカのチンパンジーの実験利用も着実に減らす方向に行っているようで、うれしいです。
ちなみに、アメリカの実験用チンパンジーは937匹(!)もいて、そのうち政府所有もしくは政府支援のものが612匹いるのだそうです。
そういえば先日ツイートもしましたが、アメリカではチンパンジーの繁殖を制限するモラトリアムが導入されていたのにもかかわらず、NIRCが2000~2009年に137匹も生ませていたことがHSUSの情報開示請求によって判明したというニュースもありました。チンパンジーを使った研究にますます理解が得られなくなりますよ、という話でした。
Lab bred chimps despite ban
http://www.nature.com/news/lab-bred-chimps-despite-ban-1.9408
Breeding contempt
http://www.nature.com/nature/journal/v479/n7374/full/479445a.html
繁殖中止は2007年5月に決まっていました。
追記(2011.12.26):
その後、海外の通信社の日本語サイトにも記事が載りました。

また、「ネイチャー」によると、最終的に研究費が出なくなる研究の数については、意見が分かれているようです。
Chimp research under scrutiny
http://www.nature.com/news/chimp-research-under-scrutiny-1.9693