先月28日の環境省の小委員会は、いよいよ実験動物福祉がテーマでした。当初の予定では、小委員会の前半で「実験動物生産業者を動物取扱業者に入れるかどうか」の議論をする予定が入っていましたが、ずっーと延期されてきて、やっと後半の実験動物の回に一緒にやる形になりました。
ブリーダーの代表として、実験動物中央研究所の鍵山さんが呼ばれた形だと理解しましたが、実際にはブリーダー業は動物実験と切り離せないという理由で、主に動物実験の適正化の話をされたと思います。
ヒアリングのもうお一方は、国立大学医学部長会議動物実験に関する小委員会委員長でもある、名古屋大学医学部長の祖父江さんでした。
そしてもうひとつが、文部科学省からのアンケート結果の報告です。
この第21回については、いろいろ書きたいことが山のようにあるのに、時間がなかなかとれないので、何回かに分けて気になったことを書き留めていこうと思います。
それで、まず最初は……
今日、偶然別件でも「安楽死」という言葉について考えさせられたので、そのことに触れようかと思うのですが、その前段として、医学部長会議からどのような話があったかをしますと……
やはり、動物実験がなぜ必要かという話に時間を割かれていたという印象だったんです。その部分は、動物愛護法だって当然前提としていることなわけで、あまり時間を割く必要はなかったと思うのですが、やはりその話が中心でした。
しかも欧米でよく「動物で研究しているから治療法が見つからないのだ、動物実験では成功するが人間ではいつもだめではないか」という批判に使われている難病の例を挙げられたので、そういう例をあえて使われたのかな、うーん、でもその失敗だった薬の数々は「動物実験ではダメだ」という例として使われてるんだけど…などという雑念を払いながら聞きました。
考えてみると、研究者の方のお話を聞くことは多いですが(まあ私の場合はちょっと偏ってるけど)、医学部長じきじきに実験動物福祉についてお話されるのを聞く機会は少ないと思います。
だからこそ、大学の実験施設が今どうなのか、研究者の意識はどうなのか、何か変わってきているのか、どういう教育をしているのか、そして使われる動物は減っているのか等々、もうちょっと具体的な3Rの話をベースにした主張が聞きたかったと感じました。
第三者認証を受けるからいいという話でもないと思うんです。そもそも第三者認証が適合しているかどうかを見ている日本の指針は大雑把すぎだし…。名大では計画書の26%は書き直しになっていると言っていたのが印象に残った程度でした。
と、私はそういう印象だったのですが、実はこのお話に委員長の林さんが厳しく突っ込みを入れた点は、「安楽死」という言葉が使われていた点だったんですね。へぇ~!と思いました。そこなのか、みたいな。
つまり、今、OIEなどでも安楽死という言葉は使わない。humane killingなどの言葉を使う。現実は違うのに、言葉の上で醜い現実を隠すようなことを科学者はしていいのか。医学部では安楽死という言葉が使われているのか、そのことについてどう思っているのか等々、心理的にはかなり嫌な話題であろう内容を質問されていました。(少々感動)
回答は、無意識に日常的に使っていたからであって、美化するようなつもりはなかったとのこと。
私も、致死処分が「できる限り安楽であってほしい」という願いがあるわけで、「安楽死」という言葉はつい日常使ってしまうので、この回答の言わんとするところもわかります。このやりとりは、かなり印象に残りました。
ただ、当日は、動物愛護法改正で論点になっていることは他にもいろいろあるのになぁ~なんて思っていたんですよね。でも今日、別件で法律の文面を改めて見てみたら、「直ちに、できる限り苦痛を与えない方法によつてその動物を処分しなければならない」となっていて…確かに安楽死とは全然言っていないなーと思ったんです。「処分」という直裁な言葉が使われている。
(これは、法改正の時には「殺処分」に変えるべきなのでは?とも思います。「処分」には譲渡と殺処分の2つが含まれるという運用がされているはずだし)
そして、そもそも大学の実験計画書自体が、「安楽死の方法」などの表現を使っていたりするのではないか?と思ったんです。もう実験の手前の段階ですでに、林委員長が言ったような、根本的な意識の違いがあらわれているのかな、と思ってしまいました。(自分の大学は違うという方もいると思うのですが、現実にそういう大学があります。ということで、また計画書を見ていたことがバレちゃうなぁ^^;)
そして法律には「できる限り」という言葉が入っている。私は、これは「現時点での科学的知見においてできうる限り最高の方法で」と解釈していますが、そうではない解釈もあるのかもしれません。例えば、「経済的に可能な範囲でできる限り」などを想定しているとしか思えないケースもあります。
「できる限り」って何なんだ、勝手な解釈をさせないためには法律・指針はどうすべきなんだ、あの古い解説書はどーなってるんだ等々、有識者の会議なのだから、そういう細かいところも本当は議論してほしいところだったと感じました。(祖父江さんは神経がご専門なんですよ、せっかく専門的立場からの意見を聞ける機会なのにもったいなかったんじゃ!?)
もちろん、施設を登録制の対象にするかどうか、これがもちろん大きな論点ではあったので、仕方ないのですが、とにかくそういう細かい結論をするには、時間が全然足りないよ!という感じでした。
本当にこの1回で終わりなのでしょうか。
すいません、これだけの話でこんなにダラダラ長く書くなんて先が思いやられますが^^;、次回へ続きます。
参考リンク:
国立大学医学部長会議
http://www.chnmsj.jp/
国立大学医学部長会議の動物愛護法見直しに関する要望書 
http://www.chnmsj.jp/doubutujikken%20youbousyo%20H22-10.html
動物実験に関する小委員会履歴
http://www.chnmsj.jp/doubutujikken%20H21.html
http://www.chnmsj.jp/doubutujikken%20H22.html