ヒトがかなり昔から狩猟をしていたというのは本当だろうと思うのですが、「狩猟がヒトを進化させた」とまで言うのは、ただのトンデモ仮説だと思っていました。どう考えても、ヒトは菜食中心の霊長類の末裔であり、進化の最初の段階でそんなに動物をつかまえて肉を食べることができたとは思えないですよね…。石器もかなりショボイ感じだし…。でも、この本を読むと、狩猟仮説はかなり一般に信じられている説なのかと愕然。(あらー、世間はそこまでマッチョであったか)

この本は、『ヒトは食べられて進化した』というタイトルどおり、人類の進化のきっかけはむしろ、食われる側の動物であったことにあるという立場をとっています。捕食からわが身を防御するために、集団生活を発達させ、意思疎通が必要になった。この考え方も以前からあるようですが、どうも狩猟仮説の方がウケがよいらしいですね(ガックリ)。著者は、狩猟仮説には、ユダヤ・キリスト教的な思想の影響があり、性差別主義を反映していると断じていますけど。

この本、途中までヒト(やそれ以外の霊長類)が動物に食われる話ばっかり続くので、「ヒェーッ!」なところがありますが、狩猟は、ヒトの進化の歴史の中のかなり遅い段階になって出現した習慣だとしているところが、やはり興味深いです。

遺跡発掘現場から動物の骨が出てきたからといって、それはすぐヒトが動物を殺していた証拠にはならない。まして、食べていた証拠にはならない。むしろ、ヒトが大型の動物に食われていた証拠である可能性もある(大型肉食獣の食事の跡という意味)と自然人類学の教科書には書いてあるそうで、人類が火というものを自在に扱えるようになる前に大がかりな狩をするヒト科はいなかったというのが定説だそうです。歯と消化管の状態から、そのことは確かと言えるらしい。

最後の方、ベジタリアンの本みたいなことが書かれていて、ちょっとウレシイ感じです。