古い数字ですが、資料をひっくり返していたら、「いつか紹介しなきゃ☆」と思っていた表が出てきたので、唐突ですがご紹介。
私が動物実験の問題を初めて知った頃、日本でされた医学研究が、動物福祉の理由によって、海外の学会誌で掲載を拒否される事例がけっこうあると言われていました。
それで、実際にそのことについて国立大学動物実験施設協議会(当時)が調査を行っていたんですね……。(調査をするくらいだから、結構問題になっていたのだろうなと思います)
動物実験施設に対するアンケート調査によるものですし、「これは氷山の一角だろう」と前島一淑さんも書いていらっしゃいますが(『新編 畜産大事典』より)、回答した施設の半分でそういう事例を把握しているということだったようです。
◆動物福祉上の指摘あるは掲載拒否事例(国立医科系大学 1987年調査)
 回答率    回答/調査機関:38/49=77.6%
 事例該当率 事例該当/回答機関:19/38=50.0%
【年度別事例数】
 1977年~81年  3件
 1982年~84年  6件
 1985年~87年 14件
 計         23件
【動物種別事例数】(重複回答あり)
 ラット    9件
 イヌ     5件
 マウス   4件
 ネコ     3件
 サル     2件
 モルモット  2件
 ウサギ    1件
 ニワトリ   1件
 
 合計 27件
【指摘・拒否理由】(重複回答あり)
 苦痛排除の方法が不適切  8件
 動物福祉上の問題      5件
 審査員に対する説明不足  5件
 動物実験指針準拠の不備  5件
 安楽死の方法が不適切   4件
 飼育管理の方法に問題   2件
 手術処置後の管理の不備 1件
 そのほか            2件
 合計 32件
【事後経過】
 指摘事項回答により最終的に採択  12件
 投稿誌不採択につき他誌へ投稿    8件
 投稿を中止、または現在審査継続中  3件
 合計 23件
私も、幾らなんでもこんなに少ないわけはないだろうと思うので、氷山の一角というのは本当ではないかと思います。
この問題、最近はあまり問題としては言われなくなっているような気もするのですが、年度別で見ると次第にふえていたので、今はどうなのかが気になるところではあります。
(ふえているのは、海外が厳しくなってくるにつれてなのか、投稿論文数の増加につれてなのか、問題視されるようになって施設が把握している事例数がふえただけなのか、これだけでは理由はよくわかりませんけど)
論文の掲載拒否・不採択にはいろいろな理由があるだろうから、この問題による拒否も、他の理由と同じように次第に空気のように「あって当然」になってきている可能性もあるような気もしつつ、でも理由として一番多い「苦痛排除の方法が不適切」くらいは改善されてきているのであってほしいな…とも思います。
医学分野は、動物実験をする研究分野としては中心的な位置にあり、使う動物数も多そうですが、このように、ある意味批判にも長い間さらされてきて、実験動物福祉については対応が一番進んでいる分野でもあるような気がします。
最近は、医学・生物学以外にも動物実験がどんどん広がっていて、そういった新興分野で動物福祉の認識が甘いという話も聞くので、問題は少しシフトしているのかもしれません。