人体冷凍  不死販売財団の恐怖

人体冷凍  不死販売財団の恐怖

  • 作者: ラリー・ジョンソン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/11/19
  • メディア: 単行本

これは、アメリカでは有名な事件なのでしょうか。事件といいますか、現在も健在な科学財団の所業を内部告発した書籍なのですが。
アルコーというその財団では、将来、科学が進んで人体復活ができるようになる日まで、遺体、それも主に頭部のみを冷凍保管することを行っているそうなのですが…その実態は、科学からも、法律からも、一般的な宗教観・倫理観からも、かなり逸脱したものとなっているようです。
確かに、この著者も言っているように、死後に遺体を冷凍保存してほしいと願うこと自体は否定されるべきではないと思いますが、この財団は、そこから一歩踏み出したことをやっているのが恐ろしい。感染性廃棄物の処理などに無頓着な様子は、まさにカルトっぽさがぷんぷんしてます。
そして、研究の名目のもとの動物実験。
手法も記録も、すべてがいい加減な実験のために、犬が殺される場面がありました。
著者はこう書いています。
彼らの多くは良心が欠落していて、自分たちの行動すべてを正当化するさまを私はたっぷりと見てきたのだ。科学的に何の価値もない実験のために動物を殺し、平気な顔でいる姿を見てきたのだ。
この本、おすすめはしますが、ただ写真ページには、遺体の首を切るところなどの写真が載っているので、それだけはご注意下さい… (といっても、表紙の写真がすでに…生首、いえ、冷凍首なのですが! )
動物実験には、こういうカルト団体が行っているものもあるんですね。身勝手すぎます。確かに、科学研究目的を掲げれば、だれでもできてしまうのが動物実験だと思います。
こういうカルトを「科学カルト」と呼ぶと、科学クラスタからは「それは科学じゃない、宗教だ!」という批判が飛んできそうですが、でも当人たちは宗教ではなく科学だと考えているようですし(実際、宗教団体ではないそうです)、世間的にはこれは「科学を信仰している科学カルト」であるのは間違いないと思います。
ちなみに、死後に冷凍保存を望む人には、SFファンや宇宙開発好きが多いらしい。時代の落とし子ですかね……
停電したら終わりじゃないの?とか思っちゃいますけどね。(←今の日本人なら間違いなく思うコト)
いずれにしても、動物実験は勘弁してほしいものです。