最近、傍聴記が滞っていましたが、本日も動物愛護管理のあり方検討小委員会を聞いてきました。そろそろ前半も終わりに近づき、動物取扱業の適正化についての議論の大詰めです。
それなのに。
動物実験業界を代表して出席されている熊本大学の先生は、今ごろになって、(最初の改正で盛り込まれた)届出制と(前回改正された)登録制の違いは何かとか、動物取扱業者が守らなければならない基準というのは(展示動物などの)飼養基準のことかとか、全く基本的な(そして後者の質問はピントはずれな)ことを聞いていらっしゃいました。
小委員会はもう13回目です。
ずっと動物取扱業者の規制強化(あるいは緩和)のことを話し合ってきました。動物取扱業者が守らなければならない基準の細目についての説明も折々にありましたし、今まで、何度も何度も何度も繰り返し繰り返し、その内容については触れられてきたはずです。
それを今ごろ、飼養基準と混同するなんて…。
小委員会は税金で開かれていて、お忙しい有識者の先生方が集まっておられる会議ですから(今回は特に、全員出席です!)、あまりに基本的なことを最後のとどめに聞いて時間を浪費させるのはいかがなものかと思ってしまいました。
最初から基本的な質問が多すぎとは思っていたのですが…やはり委員は、ある程度動物愛護法の概要がわかっている人を選ぶべきではないかと思います。
そして、動物実験業界は、動物実験施設を登録制あるいは届出制にするなと、業界として主張しているわけです。
今日、これではっきり判明したことは、動物実験業界は、現行の登録制がどういう制度か詳しく知らずに、勝手な主張をしているようだということでした。
制度をよく知らずに、どうして「だめ」とか「いい」とか判断できるのか不思議です。
「規制だから科学が減速するはずだ」といった、勝手なイメージで語られているような印象がさらに深まります。
登録制に関する誤解は、先日、2月27日に開かれた日本実験動物協会のセミナー、「実験動物の福祉-国際的動向とわが国の現状-」でも感じました。
質問のときに手を挙げましたがさされなかったので、気になったところだけとりあえず先にブログにアップしますと…(いや、セミナー全体はよかったんです、そう思ったんです、でもちょっとだけ先に書きますと…)
「2006年体制で3R原則の実効性は上がる」という講演がありまして、その中で、登録制になると自治体の職員や動物愛護推進員が立ち入りに来るんだという話が出ました。
自治体の職員はともかく、動物愛護推進員は…県など、自治体のボランティアですよ。なぜそういう話が出てくるのでしょうか。今のところ、業の登録のための正式な立ち入りを動物愛護推進員に任せている自治体なんて、ないんじゃないでしょうか。
(もちろん、職員の採用よりは条件もゆるいし、今後、リタイアされた専門家などを採用して教育する新しい仕組みをつくるなら、そういう制度も不可能ではないのかもしれないですが…今のところはありえないですよ~)
もしかしたら、自治体には動物愛護担当職員が置けるので(こちらは職員です、職員)、これと混同されたのかもしれないですが、これは自治体の職員だし、今現在、保健所やセンターで立入検査をやっている自治体の職員は獣医師なわけだから、全くの素人とは違うはずです。
(もちろん開始前には教育が必要だろうとは思いますが、まったくの素人とは素地が違うはずですよね。もしかしたら、獣医師も信用ならんという前提で話されていたのかもしれませんが…)
それに、もし仮に立入制度が実現したとして、おそらくチェックされる点は、提出されている書類と差異がないかとか、遵守基準通りの設備があるかとか、大雑把なところにならざるを得ないと思うんですよね…
何を遵守項目にするのかも、当然導入前には議論する必要があるわけですが、一件一件の実験計画書の内容だとか、細かい科学的な部分まで施設の登録制程度で踏み込めるわけはなく、そこはソフト・ローや教育、認証制度などの自主的な取り組みの継続も必要だと思います。
ということで、登録制が動物実験を止めさせるためのものだという宣伝がされているのも、全く理解できないです。そりゃ私みたいな人間が言うからでしょうが^^;、そんな、すぐ動物実験を止めさせることができるようなしくみだったら、とっくに海外で動物実験はがんがんなくなってるはずですよね…。
やっぱり日本には、みんなで決める条件を満たせないような、劣悪動物実験施設があるのかな…?と思われても仕方がないです。
「ない」と口で言ってみても、今、業界側にそれを立証する手段はないわけですから、あえてそう言ってみるわけですが。
この日のセミナーでは、別の先生が、環境省での動愛法改正に向けての検討状況についても講演され、その中で、環境省のアンケートの中の動物実験に関連する項目が紹介されました。それを見ても、実験動物福祉を普及すべき対象がどこなのか、環境省もよくわかっていないのがよく伝わったと思います。
3R普及のためには、普及する相手が誰なのかを把握していないとできないはずですし、基礎的なデータも何もなくて、普及させるための政策的議論なんて全然できないですよね。
もちろん、登録にするなら自治体がいいのか国がいいのか、そういうことも議論すべきだと思いますけど、今現在、すでに多くの自治体が、動物実験の3Rの普及をすると愛護推進計画の中で言っている現実もあります。
あ、でも熊本県は書いてないんですよねー(´・_・`) そういうところって影響するのかな、やっぱり……。