日本実験動物協会の教育セミナーフォーラム’09「動物福祉と第三者評価」を聞いてきました。実験動物技術者の方向けの研修セミナーですが、一般人にも修了書をくれました☆(別にもらっても意味ないけど…一応もらってしまうのでした(笑))
内容は、現在、動物実験に対する機関外からの検証や評価の制度について、日本でどのようなものが立ち上がりつつあるのかがわかるものでした。簡単にまとめてしまうとこんな感じです。
(1)ヒューマンサイエンス財団による動物実験の外部評価事業
→厚生労働省が所管する研究機関や企業が対象
→厚生労働省の動物実験指針に適合するかがメイン
(2)国動協・公私動協合同・検証委員会による動物実験の相互検証プログラム
→大学等が対象
→文部科学省の動物実験指針に適合するかがメイン
(3)日動協の第2期実験動物生産施設等福祉調査
→実験動物生産業者が対象
→環境省の実験動物基準に適合するかがメイン
どの仕組みも施設の訪問調査があり、組織外の人の検証の目が入るというのはとても大事なことだと思います。なので、こういう動き自体を否定するものではないのですが、やはり聞いていてなんだかユーウツになる点がありました。
一つは、評価の根拠となる各省庁の指針・基準の内容自体が非常に大まかなことしか言っていないのに、それに適合していたからといって、何なの~??という印象が否めないこと。「指針に適合しているかを検証します!」なんて言われたら、何も知らない人はすごく専門的なことが行われているように感じると思うのですが、実際の設問を見たら、果たしてどうなのでしょうか。
それからもう一つ、とってもとっても大きい疑念を持ってしまうのは……結局、対外的な宣伝戦略のためにやってるだけじゃないの?ということ。「アカウンタビリティ」はもちろん大事なことなのですが、何か動機不純なものを感じてしまうわけですね…。
日本の自主管理制度が素晴らしいという意見がうれしそうだったり、施設の登録制に100%の業者が反対するようになったのは理解が進んだからだとかいう発言があったり、チラホラ、本音が見えてしまいました。「公的な規制を阻止するための、自主管理体制作りですよ~~」という本音が、です。この人たちは結局、「ちゃんとやっている」と見せかけるための形を整えたいんじゃないかな~と感じます。
そーではなくって、やっぱり組織外の人から評価を受けることの意味は、それで現場が実際によくなっていくことにあると思うんですよね……。それがなければ、まったく意味はないと思うし、むしろ外見だけ良くなっちゃうのは害かも。
病院の医療機能評価の例もちらっと一言出て来たので私も比較しちゃうのだけど、あれは私は、認定病院だからすごいとか、そんなことは全然ないだろうと(認定病院が少なかったころから)思っていました。患者から見たらわからんよ?とか思うし。ただ、サーベイを受けるとなったら、やっぱり内部でいろいろ連携して変えていかないといけないことなんかも出てきて、共通の目標ができて、質の向上に意識が向いたりする効果はあるだろうなと思います。もしかしていまやコンサルタントなんかもあって形だけ整えたりしてる面もあるのかもしれないけど、でも高いところをめざす認定評価なら、何らかの改善効果はあるのではないかと感じます。
そして、病院の機能の外部評価みたいなことをやりたいと思った当初の理念は、動物実験ほど不純なところにはなくて、ほんとうに向上していこうという目標があったのではないか…と思うのです。
動物実験のものは、及第点を超えているかを見る程度である上に、「反対派がいるから」という消極的理由による制度のように感じられます。
この日動協のセミナーでも、実際に改善していくためのものだという話が出たのは、後半に入るくらいの頃、やっとだったのではないでしょうか。
くしくも閉会の言葉でも、アカウンタビリティ以外の理由に気づかされたという内容のコメントがあり、それはそのことを指していたと思います。このコメントは驚きであるとともに、ちょっとうれしかったのでした。
こういう気づきが広がればいいなと思いつつ、なんだか形だけ整っていくことへの疑問は残るのでありました。