人体ビジネス 臓器製造・新薬開発の近未来 フォーラム 共通知をひらく人体ビジネス
臓器製造・新薬開発の近未来

著者: 瀧井 宏臣 出版社: 岩波書店


1999年、衝撃の写真が新聞に載っていたのは、私も記憶に新しいところです。それはもちろん、人間の耳を背中につけたマウスの写真・・・。この著者も、その報道に激しく嫌悪感をもった一人のようで、安心して読み始めることができました。


生命操作の科学技術で私がもっとも懸念するのは、生命の尊厳を踏み躙っている、という一点につきる。
 ミミネズミのような怪物を造り出す一方で、子どもたちにどうやって生命の大切さを教えろというのか。
(中略) 私の感覚からすれば、科学技術の多くはすでに、批判的な知性としての本来の在り方を見失い、狂気の領域に入っていると言わざるをえない。


このような視点にたった上での、最先端医療についてのルポルタージュです。先日、シンポで話を聞いたばかりの福島雅典もインタビューを受けていて、こんなことを言っていました。


ちょっと実験室でうまくいったからといって、ヒトに使うのはトンマの最たる者です。(中略)基礎の研究者の言う「患者のため」というが一番うさん臭い。自分で患者を診ていないし、責任もとれないのだから、人を惑わす言葉は慎むべきです。


しかしこの本で個人的に驚いたのは……、文部科学省の作業部会の強引な引っ張りようですでに私たちの間で「悪役」となっているアノ人も(誰のことだよ~失礼だな~(笑))、また違う場面では「倫理的な人」となっているということです。


「もっと動物実験すべきだから」という一点には立場の違いはあれど、応援できるところもあったりするものだとわかったりするのは人生の妙ですね。(まとめにくい……)